ドイツ、送電インフラで相次ぐ破壊工作 ブランデンブルク州は「協調行動の可能性」、犯行主体は未特定

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ドイツ、送電インフラで相次ぐ破壊工作 ブランデンブルク州は「協調行動の可能性」、犯行主体は未特定

ドイツで2026年9月1日、東部ブランデンブルク州と西部ノルトライン=ヴェストファーレン州の送電インフラを狙った破壊工作が相次いで確認されました。

ブランデンブルク州Turnow-Preilackでは、Jänschwalde発電所近くの超高圧送電設備に対し、導電性物質を送電線へ到達させて短絡を発生させることを狙ったとみられる攻撃が発生しました。州警察は複数の不審な装置を現場で確認し、州刑事局(LKA)が捜査を進めています。

同じ9月1日夜には、西部Bergheim近郊の変電設備でも複数の送電線が停止しました。送電事業者Amprionは、技術的な不具合ではなく「外部からの作用」である可能性が高いとしています。一般家庭などへの電力供給に影響はなく、系統の安定性も維持されたと説明しています。

ブランデンブルク州内務省は9月3日、JänschwaldeとBergheimの2件について「協調された行動の一部に見える」との認識を示しました。一方、誰が背後にいるのかは分かっていません。

ロイターは、外国勢力や左派活動家が関与した可能性について州当局者が言及したと報じています。ただし、警察や州政府の一次情報では、犯行主体や国家関与は確認されていません。

なお、ドイツ政府は別件である8月4日のライプチヒ・ハレ空港への爆発物搭載ドローン事案について、9月1日にロシアの責任と公式に帰属判断しました。今回の送電インフラへの破壊工作2件について、ロシアへの帰属が確認されたわけではありません。

ドイツ送電インフラ破壊工作のサマリー

  • 【確認済み】2026年9月1日、ブランデンブルク州Turnow-Preilackの送電設備で破壊工作が発生しました。
  • 【確認済み】現場では複数の不審な装置が確認され、一部は作動しなかったと警察が公表しています。
  • 【確認済み】州刑事局(LKA)が捜査を引き継ぎました。
  • 【確認済み】ブランデンブルク州警察は、公共施設妨害、爆発物爆発、重要設備破壊、テロ組織形成の疑いで捜査しています。
  • 【確認済み】9月3日に犯行声明が確認されましたが、警察は真正性を確認できていません。
  • 【確認済み】同日夜、西部Bergheim近郊の送電設備でも複数の送電線が停止しました。
  • 【確認済み】送電事業者Amprionは、Bergheimの事案について外部からの作用である可能性が高いとしています。
  • 【確認済み】Bergheimでは一般の電力供給に影響はなく、系統安定性は維持されました。
  • 【確認済み】ブランデンブルク州内務省は、JänschwaldeとBergheimの2件が「協調された行動の一部に見える」としています。
  • 【未確認】2件の実行犯や背後組織は特定されていません。
  • 【未確認】外国政府・外国勢力の関与は公式には確認されていません。
  • 【未確認】左派過激派の関与も確認されていません。
  • 【別件・確認済み】ドイツ政府は8月のライプチヒ・ハレ空港ドローン事案についてロシアの責任と判断していますが、今回の送電設備2件とは別の事案です。
項目 Turnow-Preilack / Jänschwalde Bergheim
発生日 2026年9月1日 2026年9月1日
地域 ブランデンブルク州 ノルトライン=ヴェストファーレン州
対象 超高圧送電設備・変電設備付近 変電設備・発電所接続線
事象 導電性物質を送電線へ到達させ短絡を狙ったとみられる攻撃 複数の送電線が短絡後に停止
電力供給への影響 一般供給への影響は確認されず 一般供給への影響なし
捜査 ブランデンブルク州LKA 警察・検察が捜査
犯行主体 未特定 未特定
国家関与 未確認 未確認
2件の関連 州内務省が協調行動の可能性を指摘 同左

ブランデンブルク州で超高圧送電線への攻撃

ブランデンブルク州警察によると、9月1日午前8時ごろ、Turnow-Preilackの変電設備付近で架空送電線が損傷している可能性があるとの通報を受けました。

現場では複数の「USBV」と呼ばれる即製・不審爆発物が確認され、一部は作動していませんでした。

州刑事局の爆発物処理担当者が現場に入り、証拠保全を実施しました。警察は当初、住民への影響は確認されていないとしています。

ブランデンブルク州政府は同日、この事案をJänschwalde発電所近くの変電設備に対する「攻撃の試み」と位置付け、重要インフラへの攻撃として非難しました。

導電性物質を送電線へ到達させ短絡を狙う

州内務相Jan Redmann氏は現地で、犯行側が推進装置を利用し、導電性物質を超高圧送電線へ到達させたとみられると説明しています。

二つのケースでは導電性物質が送電線に到達し、短絡が発生しました。

一方、同氏は当時、爆発物そのものが送電線で爆発したと確認したわけではないとも説明しています。

現場ではさらに複数の装置が発見されており、攻撃が単発ではなく計画的だった可能性が指摘されています。

この具体的な攻撃手段について、セキュリティ対策Labでは再現につながる構造や製作方法などの詳細は扱いません。

警察はテロ組織形成容疑も含め捜査

ブランデンブルク州警察は9月2日、Turnow-Preilackの事案について、ドイツ刑法上の複数の容疑で捜査を開始したと公表しました。

対象となっているのは、

  • 公共施設の運用妨害
  • 爆発物による爆発の発生
  • 重要な作業設備の破壊
  • テロ組織の形成

の疑いです。

ただし、これらは捜査上の容疑であり、特定の組織や人物がテロ組織として認定されたことを意味しません。

犯行声明が出るも真正性は未確認

9月3日、ブランデンブルク州警察は、本件に関連する犯行声明の存在を確認したと発表しました。

ただし警察は、声明の真正性について「現時点では確認も否定もできない」としています。

そのため、声明を出した人物・組織を実行犯と断定することはできません。

攻撃者による犯行声明と、捜査機関による帰属確認は分けて扱う必要があります。

Bergheimでも送電設備に外部からの干渉

同じ9月1日夜、西部ノルトライン=ヴェストファーレン州Bergheimでも送電設備に異常が発生しました。

送電事業者Amprionによると、Rommerskirchenの変電設備周辺で発電所接続線に影響する事象があり、RWE Powerの設備停止につながりました。

Amprionは9月2日時点で、原因は警察が調査中としながらも、「高い可能性で外部からの作用とみられる」としています。

一般の電力供給には一度も影響せず、系統の安定性も維持されたとしています。

警察も、当初は技術的な障害として通報を受けたものの、その後、技術的故障ではなく故意の行為である可能性があるとして捜査を進めています。

ブランデンブルク州「2件は協調行動に見える」

ブランデンブルク州内務省は9月3日、JänschwaldeとBergheimで起きた直近の破壊工作について、「協調された行動の一部に見える」との見解を示しました。

州はこれを受け、重要インフラ防護を含む治安対策の優先順位を引き上げ、「360度セキュリティセンター」の設置を進める方針です。

一方、内務相Redmann氏は「9月1日の破壊工作の背後に誰がいるのかはまだ分かっていない」と明言しています。

つまり、現時点で確認されているのは、

「複数地域で同日に送電インフラを狙った故意の攻撃が発生した可能性が高い」

というところまでです。

背後組織や国家関与については捜査段階です。

「外国勢力関与」は公式確認ではない

ロイターは、ブランデンブルク州内相が外国勢力や左派活動家の関与可能性に言及したと報じています。

ただし、9月4日時点で確認できる州警察、州政府、送電事業者の公式発表では、外国政府や特定の政治勢力を実行主体とする帰属判断は示されていません。

また、9月3日に確認された犯行声明についても真正性は未確認です。

このため記事上は、

「外国勢力が破壊工作を実行した」

「ロシアが送電網を攻撃した」

「左派過激派による攻撃だった」

とは断定できません。

ライプチヒ空港のドローン事案はロシアへ公式帰属

今回の送電施設への破壊工作と時期が近い別件として、ドイツ政府は8月4日にライプチヒ・ハレ空港で発生した爆発物搭載ドローン事案について、9月1日にロシアの責任と判断しました。

ドイツ外務省は、ロシアを「ライプチヒでのハイブリッド攻撃の実行主体」と位置付け、ロシア総領事館の閉鎖や外交措置などを発表しています。

ドイツ政府は9月2日の記者会見でも、警察・情報機関・事件経過の三つの観点からロシアへの帰属判断を行ったと説明しました。

ただし、この公式帰属はライプチヒ空港のドローン事案に対するものです。

Turnow-PreilackとBergheimの送電インフラ攻撃について、同様の帰属判断は9月4日時点で公表されていません。

ドイツ政府は「ハイブリッド脅威」の高まりを警戒

ドイツ政府は、ライプチヒ空港の事案を受け、国内がハイブリッド脅威、破壊工作、ドローン攻撃の標的となるリスクが高まっているとの認識を示しています。

連邦内務省は、ドイツ国内の脅威状況について、従来の「抽象的」な水準から「高い」水準へ引き上げたとしています。

ただし、政府は国民に対する具体的な攻撃予告が存在するという意味ではないとも説明しています。

送電網、空港、通信網、海底ケーブルなどの重要インフラは、サイバー攻撃だけでなく物理的な破壊工作も含めた防護が必要になっています。

情報システム・セキュリティ部門への示唆

今回の事案はサイバー攻撃ではありませんが、企業の事業継続やセキュリティ部門にとって無関係ではありません。

重要インフラへの物理攻撃では、直接システムへ侵入されなくても、停電、通信断、クラウド接続断、拠点停止などを通じて業務へ影響が波及します。

企業では、サイバーインシデントだけを前提とするBCPではなく、

  • 商用電源停止時のUPS・非常用電源の稼働時間
  • データセンターや主要拠点の電源系統の冗長化
  • 通信回線の異キャリア・異経路化
  • 停電時のクラウド・SaaSへの接続手段
  • オフィス閉鎖時の業務継続手順
  • OT・IoT設備の安全停止手順
  • 重要取引先や物流拠点の停止時の代替策
  • 物理セキュリティとサイバーセキュリティの情報共有

まで含めて確認しておく必要があります。

また、国家関与が疑われる事案では、発生直後の報道や犯行声明だけで実行主体を断定せず、政府・警察・情報機関による公式帰属を待つことも重要です。

セキュリティ対策Labでは、ドイツに対するロシアのハイブリッド活動について、過去のサイバー攻撃・情報工作事例も取り上げています。

ドイツ総選挙に影響を及ぼしたロシアのハイブリッド戦―サイバー攻撃と偽情報工作の全体像

出典