独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2026年10月16日、企業・組織が不正アクセスによる情報漏えいの初動対応を相談できる「不正アクセス特別相談窓口」を同日13時に開設したと発表しました。不正アクセスをすでに受けた組織だけでなく、被害の可能性がある事象が発生している組織も対象です。専用の電話とメールで状況を受け付け、被害の可能性の判断や応急処置について助言します。
相次ぐ個人情報の大量流出を受けた緊急対応で、IPAは金融機関や通信事業者を含む幅広い業種での被害公表を背景に挙げています。企業向けの予防的な点検を呼びかけた10月9日の注意喚起に続き、今回は実際に被害が疑われる企業への初動対応支援を追加した形です。
IPA「不正アクセス特別相談窓口」の概要
- 開設日:2026年10月16日(金)13時
- 対象:不正アクセスの被害を受けている、または受けた可能性がある全国の企業・組織
- 電話:03-6759-5760
- 電話受付:平日9時30分~17時30分(12時~13時を除く)
- メール:[email protected](回答は翌営業日以降になる場合あり)
- 内容:発生事象の聞き取りと被害可能性への助言、応急処置案の助言、インシデント対応専門業者一覧の紹介、必要な相談・報告先の案内
- 一般的な予防対策や不正アクセス以外の相談は、従来の「企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口」が担当
- 情報漏えい被害に遭った個人からの相談は「情報セキュリティ安心相談窓口」が担当
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開設主体 | IPA(独立行政法人情報処理推進機構) |
| 窓口名 | 不正アクセス特別相談窓口 |
| 支援対象 | 全国の企業・組織(中小企業を含む) |
| 想定事象 | 不正アクセスによる情報漏えいが発生した、または疑われる事象 |
| 主な支援 | 初動対応・応急処置に関する助言、専門業者や報告先の案内 |
| 相談方法 | 電話、メール |
不正アクセスの「可能性」がある段階でも相談対象に
今回の窓口は、個人情報の流出が確定した企業だけを対象にしていません。管理画面への不審なログイン、通常と異なる大量のデータ照会、外部からの情報提供など、不正アクセスを疑わせる事象が発生した段階で、被害可能性について相談できます。
IPAが示している支援内容は、事象の聞き取りに基づく助言と、必要に応じた専門業者一覧・報告先の案内です。調査会社に代わってフォレンジック調査や復旧作業をIPAが直接実施すると説明したものではありません。被害拡大の防止と証拠の保全を進めながら、必要に応じて専門事業者を手配する判断が必要です。
企業が相談する際は、異常を確認した日時、対象システム、検知のきっかけ、把握しているアクセスログ、実施済みの遮断措置、扱っている個人情報の種類などを、判明している範囲で整理しておくと状況説明につながります。これは編集部による実務上の整理であり、IPAが相談時の必須提出書類として指定したものではありません。
大量の個人情報流出が相次ぐ状況を背景に開設
IPAは開設の背景として、国内の金融機関や通信事業者など、多様な事業者で不正アクセスによる情報漏えいが相次いでいることを挙げています。オンラインサービスやアカウントサービスに不正侵入し、個人情報を含むデータを窃取する事案が複数判明していると説明しました。
セキュリティ対策Labでも、バーガーキング公式アプリの約1,118万件の会員情報漏えいなど、Web・アプリを通じた大規模な情報漏えいを報じています。これは最近の事例を示すものであり、IPAが同案件を今回の窓口開設の直接の契機として指定したわけではありません。
また、ラックの国内Web・アプリ被害分析では、同社の条件に合う公表事案が10月6日までに119件に達したとされています。IPAのプレスリリースはこの件数を引用していないため、両者は別の情報として扱う必要があります。
10月9日の緊急点検要請とどう違うのか
IPAは10月9日、「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」を公表しています。この注意喚起では、外部公開アプリケーションの精査、利用する外部サービスの洗い出し、保有データの再点検を求めました。詳しい点検項目はIPAの緊急対策要請を整理した既存記事で解説しています。
10月16日に開設された特別相談窓口は、これらの予防策とは異なり、すでに異常が発生した組織からの相談を想定しています。現場では、点検で不審な挙動を発見した際に、どこへ相談し、何を優先して止めるかの判断が必要になります。IPAは今回、専門業者一覧や関係する報告先の案内を含めた相談体制を設けました。
情報システム・セキュリティ担当者が確認したい初動
不正アクセスや情報漏えいの疑いを把握した場合は、組織内のインシデント対応責任者に連絡し、被害拡大防止とログなどの証拠保全を並行して進めます。機器やサービスを一律に停止するのではなく、継続運用によるリスクと業務への影響を確認して、遮断範囲を判断します。
続いて、対象システムの管理者、委託先、個人情報保護担当者と、事実確認・報告の役割を分担します。個人情報保護委員会などへの法令上の報告義務が発生するかは、取り扱う情報や被害状況に基づく判断が必要であり、IPAへの相談だけで法定報告が完了するわけではありません。
IPAの不正アクセス対策特設サイトでは、窓口情報に加え、「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」や、Webサイト・クラウド環境の安全管理資料も案内しています。平時の判断訓練については、IPAのセキュリティインシデント対応机上演習教材も参考になります。








