米ニューヨーク南部地区連邦検察は2026年3月19日、ノースカロライナ州在住のマイケル・スミス被告が、音楽ストリーミングサービスとミュージシャンをだます詐欺スキームに関与したとして、有線詐欺共謀罪で有罪答弁したと発表しました。検察によると、被告はAIを使って数十万曲規模の楽曲を生成し、ボットでそれらを数十億回再生させることで、正当な権利者に配分されるはずのロイヤルティを不正に取得していたとされています。
概要
今回の事件では、Amazon Music、Apple Music、Spotify、YouTube Musicなどの音楽配信サービスにおけるロイヤルティ分配の仕組みが悪用されました。音楽配信サービスでは、楽曲が再生されるたびに、作曲者や演奏者、その他の権利者に少額のロイヤルティが支払われます。これらは一定の資金プールから比例配分されるため、不正に再生回数を水増しすると、本来正当に再生された楽曲の権利者が受け取るべき報酬が削られる構造になっています。
検察によると、スミス被告はまず、各ストリーミングプラットフォーム上に多数のアカウントを作成しました。
そのうえで、自身が権利を持つ楽曲を、これらのボットアカウントで継続的に再生させていたとされています。単一の楽曲だけを大量再生すると異常値として発覚しやすいため、再生を多数の楽曲に分散させ、実在する利用者による自然な再生に見せかけていたとみられます。
AIはどのように悪用されたのか
このスキームを成立させるには、ボットに再生させる大量の楽曲が必要でした。検察によると、スミス被告はその供給源として人工知能を利用し、数十万曲のAI生成楽曲を用意していたとされています。AIを使うことで短期間に大量の楽曲をそろえることが可能になり、不正再生を幅広く分散させることができたとみられます。
結果として、スミス被告が用意した数十万曲のAI生成楽曲は、ボットアカウントによって数十億回再生され、検察発表では、不正再生による金額は809万1843.64ドル(約12億8490万円)です。
事件の重さ
今回の事件の本質は、単なる再生数の水増しではありません。配信プラットフォームの報酬分配モデルそのものを悪用し、実在するアーティストやソングライターから収益を奪っていた点にあります。検察は、楽曲もリスナーも偽物だった一方で、被告が不正に得た資金は現実の金であり、本来は実在するアーティストや権利者に支払われるべき金額だったと強調しています。
加えて、今回はAIが不正の規模を大きく引き上げた点も見逃せません。従来であれば、膨大な数の楽曲をそろえること自体が不正スキームの制約になっていましたが、AIの利用によってそのハードルが大きく下がりました。ボットによる大量再生と組み合わせることで、不正収益化の自動化と大規模化が進んだ形です。








