
スペイン国家警察とグアルディア・シビル(憲兵隊)は、2025年4月7日、AIを用いた巧妙な仮想通貨詐欺やSNS型投資詐欺に関与した6人を逮捕したと発表しました。逮捕されたのは34歳から57歳の男女で、犯罪グループはスペイン南部のアリカンテやグラナダなど複数の拠点から活動していたとみられます。
この詐欺事件では、世界中で208人が被害に遭い、被害総額は1,900万ユーロ(約21億円) にのぼります。犯行は「COINBLACK – WENDMINE」作戦の名で2年以上にわたって捜査され、容疑者らは多数の偽会社や50を超える偽名を使って金銭を洗浄・隠蔽していたことも判明しました。
AIとディープフェイクを悪用した巧妙な手口
犯行グループはまず、AIで生成した著名人のフェイク広告動画 を使い、被害者の関心を引く仮想通貨投資の広告をウェブサイトやSNSに表示。
対象者はアルゴリズムによって選別され、狙われたのは「高収益を求めるが投資に不慣れ」な層とみられます。
最初は少額投資で「高収益」が偽装され、信頼を得たうえで、追加投資を誘導。担当者を装った犯人は金融アドバイザーや恋人を名乗るなどして被害者との信頼関係を構築。偽の投資ポータルサイトを使って、利益が出ているように見せかけていました。
被害者を何度も騙す多段階詐欺
投資金の出金を申し出ると「ブロックされている」「税金を払えば解除される」などと新たな送金を要求。被害者がこれに応じると、さらに「ユーロポール職員」や「イギリスの弁護士」を名乗る人物から連絡が入り、「回収できるが税金の支払いが必要」と偽装。三段階にわたる詐欺 を繰り返す構造でした。
この手口により、初期被害だけでなく、被害者が最後まで資金回収の望みを持ち続けてさらなる損害を被るという悪質なスキームとなっていました。
警察による摘発と今後の対策
スペイン警察は、アリカンテ、トレヴィエハ、サンタ・ポーラ、ビリャホヨーサなど複数の地域で一斉に捜査を実施。詐欺、資金洗浄、文書偽造などの容疑で6人を逮捕し、主犯格の女性は国外逃亡を図っていたところを確保、現在は勾留中です。今後も国際的な共犯者の追跡が継続されます。
押収されたのは、現金10万ユーロのほか、スマートフォン、PC、ハードディスク、偽装銃器など。また、多数の書類から関連企業の情報も押収され、捜査が進められています。
国民への注意喚起と防止策
スペイン当局は以下の対策を呼びかけています
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「高収益・ノーリスク」の投資話には警戒を
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投資先が公的機関(例:スペイン中央銀行)に登録済みか確認する
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有名人の広告を鵜呑みにせず、AIによるフェイク動画の可能性を常に疑う
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急かされたり追加投資を迫られたりする場合は即時中断
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SNSやメッセージアプリで届く勧誘には個人情報を渡さない
疑似の詐欺広告
2024年3月15日からITmediaなどの複数媒体のGoogle広告経由で朝日新聞のフィッシングサイトに誘導させるフィッシングキャンペーンを観測しました。
フィッシングサイトでは、朝日新聞の見た目で徹子の部屋の黒柳徹子さんとムロツヨシさんが対談しているような記事が表示されEishin Capitalという仮想通貨の自動取引ツールへ遷移させる、典型的な詐欺広告によるフィッシングキャンペーンです。
この事件は、AIとディープフェイク技術が悪用されることで、従来よりも信ぴょう性が高く、騙されやすい投資詐欺が可能になる現代のリスクを象徴しています。今後はテクノロジーに対するリテラシー向上と法整備の強化が急務です。