コメ兵HD子会社セルビー元経理責任者を業務上横領容疑で逮捕 約1.2億円の私的流用、単独の口座管理が焦点に

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コメ兵HD子会社セルビー元経理責任者を業務上横領容疑で逮捕 約1.2億円の私的流用、単独の口座管理が焦点に

コメ兵ホールディングスの連結子会社で、中古宝飾品の買取・販売などを手がける株式会社セルビーの元経理責任者が2026年8月13日、会社資金約1億200万円を横領した疑いで逮捕されました。

コメ兵ホールディングスは約8カ月前の2025年12月17日、元経理責任者がセルビーの預金口座から自身の口座への送金などにより現金を私的に流用していたことを公表しています。同社の社内調査で確認された損害額は約1.2億円でした。

今回の逮捕で、2025年11月から12月にかけてインターネットバンキングを利用し、10回にわたり会社口座から自身の口座へ送金していた疑いが具体化しました。さらに、経理手続きや預金口座の管理が元経理責任者に集中し、送金時に上長の承認を必要としない運用だったことも明らかになっています。

なお、逮捕容疑や送金方法、口座管理の状況、本人の供述など、コメ兵ホールディングスの公表資料に記載されていない事項については、警視庁への取材に基づくテレビ朝日、FNNプライムオンラインなどの報道内容を参照しています。

コメ兵HD子会社セルビーの横領事案のサマリー

  • コメ兵ホールディングスは2025年12月17日、連結子会社セルビーの元経理責任者による不正行為を公表しました。
  • 2025年11月から12月にかけて、セルビーの預金口座から自身の口座へ送金するなどして現金を私的に流用していました。
  • コメ兵ホールディングスの社内調査で確認された損害額は約1.2億円です。
  • 不正は元経理責任者本人からの申告をきっかけに判明しました。
  • 元経理責任者は社内規程に基づき懲戒解雇されています。
  • 2026年8月13日、元経理責任者が業務上横領容疑で逮捕されました。
  • 逮捕容疑は、インターネットバンキングを利用し、10回にわたり計約1億200万円を自身の口座へ送金したというものです。
  • 1回あたり最大2,500万円を送金していたとされています。
  • 元経理責任者は会社の預金口座を1人で管理し、経理手続きを一任されていました。
  • インターネットバンキングの送金に上長の承認を必要としない状態だったとされています。
  • 横領前に株式投資をめぐる詐欺被害に遭い、その資金を工面する目的で会社資金を流用した趣旨の供述をしています。
  • 会社公表の損害額約1.2億円と逮捕容疑約1億200万円には約1,800万円の差があります。
  • コメ兵ホールディングスはセルビーとグループ各社の内部統制ルールを強化し、業務プロセスの継続的な見直しを進めています。
項目 内容
対象組織 株式会社セルビー(コメ兵ホールディングス連結子会社)
不正行為の公表日 2025年12月17日
逮捕日 2026年8月13日
対象者 セルビーの元経理責任者
不正行為の期間 2025年11月から12月
会社が確認した行為 セルビーの預金口座から自身の口座への送金などによる現金の私的流用
会社公表の損害額 約1.2億円
逮捕容疑額 約1億200万円
逮捕容疑の送金回数 10回
発覚経緯 元経理責任者本人からの申告
経理・口座管理 預金口座を1人で管理し、経理手続きを一任されていたとされる
送金時の承認 上長の承認を必要としない状態だったとされる
処分 懲戒解雇
法的対応 損害額の回収と刑事上の法的措置を進めると会社が公表
業績への影響 2026年3月期第3四半期に反映。連結業績への影響は限定的として業績予想は据え置き
再発防止策 内部統制ルールの強化、業務プロセスの確認、ルールの周知徹底、継続的な業務プロセスの見直し

2025年12月に約1.2億円の私的流用を公表

今回の逮捕につながった不正行為は、2025年12月の時点でコメ兵ホールディングスが把握し、公表していました。

セルビーで経理責任者を務めていた元従業員1名が、2025年11月から12月にかけて、セルビー名義の預金口座から自身の口座への送金などによって現金を私的に流用していました。

不正が発覚するきっかけとなったのは、元従業員本人からの申告です。

コメ兵ホールディングスは申告を受けた直後に社内調査チームを設置し、弁護士など外部専門家と連携しながら、本人への事実確認、資金移動履歴、現預金残高の推移などを調査しました。

その結果、損害額は約1.2億円と確認されました。

元従業員は社内規程に基づいて懲戒解雇され、同社は弁護士を通じて損害額の回収に必要な対応と刑事上の法的措置を進める方針を示していました。

10回にわたり約1億200万円を送金、1回2,500万円のケースも

2026年8月13日の逮捕容疑は、2025年11月から12月にかけてインターネットバンキングを利用し、セルビーの預金口座から自身の口座へ10回にわたり計約1億200万円を送金したというものです。

1回の送金額が2,500万円に達したケースもあり、約1カ月程度の短期間に高額な資金移動が繰り返されていました。

会社が2025年12月に公表した損害額は約1.2億円のため、逮捕容疑額とは約1,800万円の差があります。

この差額について、コメ兵ホールディングスから追加の説明は公表されていません。会社の内部調査で把握した不正行為全体と、捜査機関が今回の逮捕容疑として立件した範囲が異なる可能性があります。

そのため、約1億200万円を本事案の最終的な被害総額として扱うのではなく、会社が把握する損害額は約1.2億円、今回の逮捕容疑額は約1億200万円と分けて見る必要があります。

経理担当者1人に預金口座の管理と経理手続きを集中

内部統制の観点で重要なのが、セルビーの資金管理体制です。

元経理責任者は会社の預金口座を1人で管理し、経理手続きを一任されていました。口座の暗証番号を把握していたのは元経理責任者と社長の2人で、元経理責任者がインターネットバンキングから送金する際には上長の承認を必要としない状態だったとされています。

こうした運用では、送金を実行する担当者と、その送金が適切かを承認・確認する担当者を分離する「職務分掌」が十分に機能しにくくなります。

特に今回のように数千万円単位の送金を一人で実行できる場合、システムへのログイン自体が正規の認証情報で行われているため、単純な不正アクセス対策だけでは異常を検知できません。

企業の資金管理では、「誰がシステムへアクセスできるか」だけでなく、「誰が送金を登録できるか」「誰が承認するか」「誰が銀行残高と帳簿を照合するか」を分離することが重要です。

発覚は内部監査ではなく本人からの申告

今回の不正は、内部監査や銀行取引のモニタリングによって発見されたものではなく、元経理責任者本人からの申告をきっかけに判明しました。

1億円を超える資金が短期間に会社口座から移動した後まで不正が顕在化しなかった点は、内部統制を考えるうえで重要です。

高額な資金移動については、担当者本人の判断だけで実行できない承認フローにすることに加え、送金後にも別の担当者が銀行口座の残高や取引履歴を確認する仕組みが求められます。

また、会社口座から従業員個人名義の口座への送金、大口の新規振込先への送金、短期間に繰り返される高額送金などは、通常取引と異なるパターンとして検知できる可能性があります。

本人からの申告がなければ発見がさらに遅れていた可能性もあり、人的な信頼とは別に、システムと業務プロセスによる相互牽制が必要な事案といえます。

横領の背景に投資詐欺被害

元経理責任者は会社資金を流用する前、投資サイトを通じた株式投資をめぐる詐欺被害に遭っていたとされています。

捜査機関の調べに対しては、投資サイトで詐欺に遭い、違約金として求められた資金に充てるため会社の金を横領した趣旨の説明をしています。

また、「投資に使って利益が出たら会社に戻そうと思った」といった趣旨の供述も伝えられています。

詐欺被害に遭ったことと会社資金の私的流用は別の問題ですが、企業の内部不正リスクを考えるうえでは、従業員の金銭的な困窮が不正の動機となるケースがある点には注意が必要です。

投資詐欺、ギャンブル、多額の借金、生活上の資金難などを抱えた担当者に、送金と承認を含む強い財務権限が集中している場合、不正の動機と機会が重なる可能性があります。

内部不正対策は「信頼できる従業員だから任せる」という運用ではなく、誰が担当しても一人では不正を完結できない仕組みにしておくことが基本となります。

約1.2億円の損失を第3四半期業績に反映

コメ兵ホールディングスは2025年12月の公表時、本件の損害額を2026年3月期第3四半期の連結業績へ反映する方針を示しました。

当時、連結業績への影響は限定的として、2025年11月7日に発表した業績予想は修正していません。

2026年2月13日に公表された第3四半期決算説明資料でも、支払利息の増加に加えて「連結子会社の不正行為に関する損失」が営業外費用の増加要因として説明されています。

一方、第3四半期累計では売上高、営業利益、経常利益が過去最高となり、不正行為による損失を含む営業外費用の増加を増収・増益で吸収しました。

財務面でグループ全体への影響が限定的だったとしても、経理責任者による1億円規模の不正を短期間で防止・検知できなかった点は、内部統制上の問題として別途検証する必要があります。

セルビーは2022年にコメ兵HDが完全子会社化

セルビーは2001年設立で、中古宝飾品の買取・販売事業に加え、システム開発やサイト構築などのデジタル事業を展開しています。

コメ兵ホールディングスは2022年8月、セルビーの全株式を取得してグループ会社化しました。

グループ化の目的として、ジュエリーの販売・買取の強化や、セルビーのデジタル事業を活用した「リユース×テクノロジー」の推進を挙げています。

今回の不正行為は、セルビーがコメ兵ホールディングス傘下に入ってから約3年後に発生しました。

M&A後の子会社管理では、事業やシステムの統合だけでなく、銀行口座、支払承認、経費精算、会計処理、特権アカウントなどの内部統制を親会社の基準へどこまで統合できているかも重要です。

グループ会社で独自の経理慣行が残っている場合、権限集中やチェック不足が見過ごされる可能性があります。

経理担当者による横領で繰り返される「職務分掌」の問題

セキュリティ対策Labでは、経理担当者へ権限が集中した結果、多額の横領につながった事案を複数取り上げています。

アンドエスティHD子会社、ゼットンの経理責任者が1.7億円を横領では、元経理責任者が複数年にわたり会社口座から現金を引き出し、不正な経理処理によって帳簿上の隠ぺいを行っていました。

熊本市の学校法人 開新学園で経理職員が2億円を横領では、同一人物が20年以上にわたり経理業務を担当し、監査時には口座間で資金を移動させることで不正の発覚を免れていました。

手口や発生期間は異なりますが、共通するのは、資金の移動、帳簿処理、残高確認など複数の重要業務を同一人物が担える状況です。

内部不正を防ぐには、担当者の勤続年数や役職、信頼度にかかわらず、一人で送金から確認まで完結できない業務プロセスを構築する必要があります。

情報システム部門への示唆

今回の事案は経理部門で発生した横領ですが、再発防止には情報システム部門による権限設計とログ管理も大きく関係します。

まず確認すべきなのは、インターネットバンキングや会計システムで、送金の登録者と承認者が分離されているかです。高額送金を1人のアカウントだけで完結できる設定は避け、金額に応じた複数承認を導入することが重要です。

1回・1日あたりの送金上限、新規振込先を登録する際の承認、従業員個人名義口座への送金制限なども有効です。

また、通常とは異なる資金移動を検知する仕組みも必要です。例えば、短期間の高額送金、初めての振込先への大口送金、会社口座から従業員名義口座への送金などを検知し、経理担当者とは別の管理者へ通知できれば、被害拡大前に確認できる可能性があります。

会計システムと銀行口座の残高照合についても、送金を行う担当者とは別の担当者が実施することが重要です。

さらに、インターネットバンキング、ERP、会計システム、経費精算システムなどの操作ログは、当該担当者自身が削除・変更できない場所へ保存し、定期的に異常操作を確認できる状態にする必要があります。

コメ兵ホールディングスは本件を受け、セルビーとグループ各社の内部統制ルールを強化し、他に同様の事案が起きない業務プロセスであることを確認したとしています。

規程の周知だけで終わらせず、システム上も「一人では高額な資金を動かせない」「異常な取引は別の担当者が把握できる」状態まで実装することが、内部不正への実効的な対策となります。

出典