温室・農業資材、建材、額縁などを手がける株式会社大仙は2026年8月17日、社内システムへの不正アクセスに関する第2報を公表しました。同社は、本件に関係する可能性のある情報がインターネット上に掲載されていることを確認しています。ただし、大仙から流出した情報かどうかや、情報の内容、件数、対象者は確認できていません。
一方、セキュリティ対策Labが確認したランサムウェアグループ「AiLock」のリークサイト掲載画面では、大仙の名称と公式ドメインが掲出され、「195Gb uncompressed data」を保有するとの主張が確認されました。AiLockの主張を裏付けるデータの真正性は確認できず、大仙も攻撃者の特定やAiLockとの関係を公表していません。
現時点で確認されているのは、マルウェア感染を伴う不正アクセス、社内システムの停止、受注・出荷業務への影響、本件に関係する可能性のある情報のネット上への掲載です。ランサムウェア感染、195GBのデータ窃取、AiLockによる攻撃は、いずれも企業側が確認した事実ではありません。
大仙への不正アクセスとAiLockの主張のサマリー
- 【確認済み】大仙は2026年8月1日午前2時ごろ、社内システムへの不正アクセスとマルウェア感染を確認しました
- 【確認済み】不正アクセスの検知後、社内の全システムを遮断しました
- 【確認済み】大仙は8月2日から外部のセキュリティ専門機関と影響範囲の特定、原因究明、ログ解析を開始しました
- 【確認済み】8月3日の第1報では、全システムの遮断により受注・出荷業務へ影響が出ていると公表しました
- 【確認済み】8月17日の第2報では、本件に関係する可能性のある情報がインターネット上に掲載されていることを確認したと公表しました
- 【確認済み】掲載情報が大仙から流出したものか、情報項目、件数、対象者は確認できていません
- 【攻撃者の主張】AiLockは大仙の公式ドメインを掲出し、195GB相当の非圧縮データを保有していると主張しています
- 【未確認】大仙はランサムウェア感染、データ暗号化、身代金要求、AiLockによる攻撃を公表していません
- 【未確認】初期侵入経路、悪用された脆弱性、侵害されたアカウント、影響を受けたシステムの範囲は調査中です
- 【未確認】マイナンバーや決済情報が含まれるかは確認中で、個人情報保護委員会への報告実施も公表されていません
- 【対応中】影響を受けた可能性のある機器・アカウントの切り離し、認証情報の再設定、記録の保全、監視強化を進めています
- 【見通し】調査には約2か月かかる見込みですが、状況により前後する可能性があります
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表日 | 第1報:2026年8月3日、第2報:2026年8月17日 |
| 発生日・確認日 | 2026年8月1日午前2時ごろ |
| 対象組織 | 株式会社大仙 |
| インシデント | 社内システムへの不正アクセス、マルウェア感染、システム停止 |
| 業務への影響 | 第1報時点で受注・出荷業務に影響。第2報時点の詳細な復旧範囲は確認できませんでした |
| 侵入経路 | 調査中 |
| ランサムウェア感染 | 確認できませんでした。大仙の公表は「マルウェア感染」です |
| 情報流出 | 本件に関係する可能性のある情報のネット掲載を確認。ただし、大仙からの流出かは未確認です |
| 情報の内容・件数 | 確認できませんでした |
| AiLockの主張 | 「195Gb uncompressed data」を保有すると主張。真正性は未確認です |
| 攻撃者への帰属 | 大仙は攻撃者を特定していません |
| 対応状況 | 全システムの遮断、機器・アカウントの切り離し、認証情報再設定、証拠保全、外部専門家による調査、監視・アクセス管理の強化 |
| 個人情報保護委員会への報告 | 法令上必要な場合は期限内に報告するとしています。報告実施は確認できませんでした |
| 調査完了の見込み | 約2か月。状況により前後する可能性があります |
第2報で「関係する可能性のある情報」のネット掲載を公表
大仙は8月17日の第2報で、本件に関係する可能性のある情報がインターネット上に掲載されていることを確認したと明らかにしました。
ただし同社は、掲載された情報について、大仙から流出したものかどうかを確認できていません。どのような情報が何件含まれるのか、誰の情報なのかも未確認です。この段階は「情報流出が確認された」状態ではなく、「本件に関係する可能性のある情報が掲載され、流出元や内容を調査している」状態です。
大仙は、マイナンバーや決済情報など、特に慎重な取り扱いが必要な情報が含まれていないかを優先して確認しています。調査には約2か月を見込んでおり、調査中でも公表すべき事実や被害防止に必要な情報が判明した場合は速やかに公表するとしています。
AiLockは195GBの非圧縮データ保有を主張
セキュリティ対策Labが確認したAiLockのリークサイト掲載画面には、「DAISEN」の名称、大仙の公式ドメイン「daisen.co.jp」とともに、「195Gb uncompressed data」と記載されていました。公開時期は「Coming soon」と表示されています。

画面上の表記は「195Gb」ですが、リークサイトの文脈では195GB相当の非圧縮データを指している可能性があります。ただし、提供された画面にはデータの内容やサンプルは表示されておらず、実際に大仙から取得したデータか、主張する容量が正確かは確認できません。
現段階で確認できるのは「AiLockが大仙を掲載し、データ保有を主張した」という事実までです。AiLockが不正アクセスを行ったことや、195GBのデータが流出したことは確定していません。
AiLockの活動や技術的特徴については「ランサムウェアグループAiLockとは―規制当局への通報を武器にする新興RaaS」で整理しています。同グループによる国内組織への過去の主張は「ランサムウェアグループAiLockが日本交通へのサイバー攻撃を主張」でも解説しています。
企業発表と攻撃者側の主張は分けて判断する必要がある
| 論点 | 大仙が公表した内容 | AiLockの主張・未確認事項 |
| 不正アクセス | 社内システムへの不正アクセスを確認 | AiLockが実行したかは未確認 |
| マルウェア | 感染を確認 | AiLockのランサムウェアかは未確認 |
| システム影響 | 全システムを遮断し、受注・出荷業務に影響 | 暗号化の有無は未確認 |
| ネット掲載 | 本件に関係する可能性のある情報の掲載を確認 | AiLockはデータ保有を主張 |
| データ流出 | 大仙から流出した情報か確認できていない | 195GB相当の非圧縮データ保有を主張 |
| 情報項目・対象者 | 調査中 | 掲載画面からは確認できない |
| 攻撃者 | 特定・公表していない | AiLockが一方的に大仙を掲載 |
攻撃者のリークサイトへの掲載と、企業が情報流出を確認したことは同義ではありません。攻撃者が主張した容量を、そのまま「漏えい件数」や「流出量」として扱うこともできません。今後の調査では、ネット上の掲載情報と大仙が保有するデータとの一致、外部送信の痕跡、対象者と情報項目、侵入経路、暗号化の有無が主な確認点となります。
機器・アカウントの切り離しと認証情報の再設定を実施
大仙は被害拡大を防ぐため、影響を受けた可能性のある機器とアカウントを切り離し、パスワードなどの認証情報を再設定しています。あわせて記録を保全し、外部専門家による調査を継続しています。
再発防止に向けては、端末、サーバー、ネットワークの監視強化、認証方法とアクセス権の見直し、社内対応体制の一本化を進める方針です。安全性を確認したうえで、サービスの再開時期と範囲を公表するとしています。
関係機関への対応については、個人情報が流出した、または流出した可能性があり、法令上の報告が必要な場合、調査完了を待たず個人情報保護委員会などへ期限内に報告すると説明しました。必要に応じて警察や関係機関への相談・届出も行うとしていますが、8月17日時点で実際に報告・届出を行ったかは公表されていません。
取引先を装うメールや電話への警戒が必要
大仙は、同社を装ったメール、SMS、電話、ウェブサイトに注意し、不審なリンクや添付ファイルを開かないよう呼びかけています。同社がメールや電話でパスワードや暗証番号を尋ねることはないとしています。
仮に取引先情報や担当者情報が外部へ流出していた場合、大仙や取引先を装った標的型メール、請求書や振込先の変更を装うビジネスメール詐欺、電話を組み合わせたソーシャルエンジニアリングに悪用される可能性があります。現時点でこうした二次被害が確認されたとの発表はありませんが、関係者は通常と異なる送金依頼や認証情報の確認依頼を、既知の連絡先を使って別経路で確認することが重要です。
情報システム部門への示唆
今回の公表では、攻撃の起点や影響範囲が確定する前に、全システムを遮断したことで受注・出荷業務に影響が生じています。製造・施工・物流を伴う企業では、セキュリティ上の封じ込めと事業継続を同時に進める必要があります。
情報システム部門は、ネットワークや認証基盤を一律に停止した場合に影響する受注、出荷、製造、施工管理、取引先連携を事前に洗い出し、重要業務を安全に縮退運転する手順をBCPへ組み込む必要があります。復旧時は、バックアップから戻すことだけを優先せず、侵入経路の遮断、認証情報の失効、管理者権限の再確認、EDR・ネットワークログによる再侵入監視を実施することが重要です。
また、リークサイトへの掲載を確認した場合は、攻撃者の主張だけで流出を断定せず、掲載データの真正性、社内データとの一致、外部送信ログをフォレンジック調査で確認する必要があります。企業広報では、確認済み事実、可能性、攻撃者の主張を分け、更新予定と問い合わせ窓口を明示することが求められます。








