楽天、独ヘルシングと提携し攻撃型 ドローンの陸自導入を支援 -ドローン 供給網の中国依存からの脱却

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楽天、独ヘルシングと提携し攻撃型ドローンの陸自導入を支援 -ドローン供給網の中国依存からの脱却

日本経済新聞は2026年8月17日、楽天グループがドイツの防衛スタートアップ「ヘルシング(Helsing)」と提携し、同社の攻撃型ドローン「HX-2」を陸上自衛隊向けに提案するなど日本への導入を支援すると報じました。将来的には日本国内での量産化も視野に入れているとされます。ウクライナの戦場で実戦投入されてきたドローンが、日本の防衛調達の現場に持ち込まれようとしているこの動きは、当サイトが継続的に報じてきた「軍事ドローンのサプライチェーンにおける中国依存」という構造的な脆弱性を、日本が是正する契機になり得ます。

この記事のサマリー

  • 楽天グループは、ドイツの防衛AI企業ヘルシングと提携し、同社製の攻撃型ドローン「HX-2」の日本市場での窓口を務めます。楽天の説明によると、陸上自衛隊が導入の可否を判断するため、2026年9月末まで実証試験を行っているとされます。ただし取材時点で陸上幕僚監部は事実関係を確認中としてコメントを控えており、この点は楽天側の説明として扱う必要があります。
  • 用途・調達規模は本記事執筆時点で未定です。共同通信は「迎撃用」として沿岸部での上陸阻止を想定した報道を行っていますが、Helsing公式はHX-2を一貫して「Strike Drone(攻撃型ドローン)」に分類しており、本記事でも「攻撃型」を基本表現とします。なお、共同通信が報じた「潜水艦への阻止」という用途については、Helsing公式の製品説明に対潜水艦能力の記載がなく、防衛省の2026年版防衛白書でも陸自の小型攻撃UAVは離島周辺で船艇等を対象とする構想として整理されているため、本記事では採用していません。
  • HX-2は2024年12月に発表された電動X翼型の滞空型攻撃ドローンで、重量約12キログラム、最高速度は時速220キロメートル、射程は最大100キロメートルとされています。公式仕様では「多目的・対戦車・対構造物」用途が明記されています。ウクライナへは報道ベースで数千機規模が投入・供給されているとされ、Helsingは2025年に6,000機の生産・供給を発表していますが、これは生産計画であり全機の納入完了を意味するものではありません。2026年1月時点では月数百機規模の供給が続いているとされています。
  • Helsing共同CEOのScherf氏は、2026年7月のニューヨーク・タイムズ紙の報道を引用した複数の海外メディアで、ウクライナでの任務成功率を約70%と説明したと伝えられています。これはHelsing側の自己申告であり、独立した軍による評価値ではない点に注意が必要です。
  • 楽天は、ヘルシングが日本政府によるシステム利用について「初期的な合意」に達したと説明していると伝えられていますが、国内での量産化についてはヘルシング側と現時点で協議していないとしています。
  • この提携は、10月末に予定されるドイツのメルツ首相の初来日、高市早苗首相との安全保障協議を控えたタイミングで表面化しました。
  • 当サイトが以前報じたとおり、世界の商用ドローン市場は70〜90%を中国が握り、軍事ドローンに不可欠なレアアース磁石の最終加工工程の約90%も中国に集中しています。ヘルシングが視野に入れる「日本国内での量産」は、この供給網の脆弱性を軽減する具体的な選択肢の一つになり得ます。

整理表

項目 内容
報道日 2026年8月17日(日本経済新聞が先行報道)
当事者 楽天グループ、ヘルシング(独、2021年創業)
対象製品 攻撃型ドローン「HX-2」
陸自の対応 楽天の説明によると、導入可否判断のための実証試験を2026年9月末まで実施中(陸上幕僚監部は事実関係を確認中とし、コメントを控えている)
HX-2の主な性能 重量約12kg、最高速度時速220km、射程最大100km、電動X翼型。公式仕様は多目的・対戦車・対構造物
ウクライナでの実績 報道ベースで数千機規模を投入・供給、Helsing共同CEOが述べたとされる任務成功率は約70%(同社側の説明)
単価(参考) 約1万7,500ユーロ(欧州向け参考値)
国産化の検討状況 楽天は視野に入れると説明、ヘルシングとの具体的協議は未着手
関連する外交日程 10月末、ドイツ・メルツ首相の初来日、高市首相との安全保障協議を予定
関連する構造的課題 世界の商用ドローン市場の70〜90%を中国が占有、軍事用レアアース磁石の最終加工の約90%が中国に集中

何が起きたか

日本経済新聞の報道によると、楽天グループはヘルシングと提携し、同社の攻撃型ドローンを陸上自衛隊向けに提案するなど、日本への導入を支援します。ドローンの国内生産も視野に入れているとされています。共同通信は、対象となるドローンを「迎撃用」とし、沿岸部での上陸阻止などの用途を想定した報道を行っています。一方、Helsing公式はHX-2を一貫して「Strike Drone(攻撃型ドローン)」に分類しており、本記事でも「攻撃型」を基本表現として用います。なお、共同通信が報じた「沿岸に近づく潜水艦の阻止」という具体的な用途については、Helsing公式の製品説明に対潜水艦能力の記載がなく、防衛省の2026年版防衛白書でも陸自の小型攻撃UAVは離島周辺で船艇等を探知・識別・攻撃する構想として整理され、潜水艦への対応はUUV(無人潜水機)側の任務として区別されているため、本記事では採用していません。ヘルシング自身は自社の製品ページでHX-2の用途を「多目的・対戦車・対構造物」と明記しており、「対人」との記載は確認できませんでした。

楽天の説明によると、陸上自衛隊は9月末までの実証試験の結果を踏まえて導入の可否を検討するとされています。ただし取材時点で陸上幕僚監部は事実関係を確認中としてコメントを控えており、試験の実施自体を断定するのではなく、楽天側の説明として扱う必要があります。試験の具体的な評価項目や調達規模は明らかにされていません。楽天は、国内でドローン操縦の講習や建物外壁点検を手がけてきましたが、軍事目的の機体を扱うのは今回が初めてです。同社は過去、国内で開催された防衛装備品の展示会で、ウクライナの新興企業のドローン出展を支援した実績もあります。

ウクライナで実証された性能

HX-2は2024年12月に発表された、電動推進のX翼型滞空攻撃ドローンです。開発元の公表値では重量約12キログラム、最高速度は時速220キロメートル、射程は最大100キロメートルとされ、公式仕様では多目的・対戦車・対構造物への対応が明記されています。ウクライナへは、報道ベースで数千機規模が投入・供給されているとされています。Helsingは2025年、6,000機のHX-2を生産しウクライナへ供給する計画を発表していますが、これはあくまで生産・供給計画であり、全機の納入が完了したことを意味するものではありません。2026年1月時点の報道では、月数百機規模の供給が続いているとされています。

Helsingの共同CEOであるScherf氏は、2026年7月のニューヨーク・タイムズ紙の報道を引用した複数の海外メディアで、ウクライナでの任務成功率を約70%と説明したと伝えられています。これはHelsing側の自己申告であり、独立した軍による評価値ではない点に注意が必要です。また、米陸軍の公式資料によると、リトアニアで実施された演習「Project Flytrap」は2026年4月27日から5月31日にかけて行われており、この演習でHX-2が発射17機中15機を目標に命中させ、成功率88%を記録したと報じられています(関連記事の一部は演習内容を6月に報じていますが、これは報道時期であり、演習自体の実施時期ではありません)。

同ドローンの特徴は、GPSが妨害される環境下でも、搭載されたAIによる終末誘導によって目標の追尾を継続できる点にあります。電子戦による通信途絶下でも運用できる設計は、通信リンクが常に確保できるとは限らない実戦環境を踏まえたものです。単価は欧州向けで約1万7,500ユーロとされ、従来型の精密誘導兵器と比べて低コストとされています。

国防上の必要性—中国依存からの脱却という文脈

この提携が国防上重要な意味を持つのは、単に新型ドローンを導入するという話にとどまらない点にあります。当サイトが軍事ドローンのサプライチェーンに潜む中国依存の深刻な実態と日本の対応とデュアルユースの必要性で報じたとおり、世界の商用ドローン市場は70〜90%を中国企業が占有しており、軍事ドローンのモーターに不可欠なレアアース磁石の最終加工工程についても、約90%が中国に集中しているという構造的な脆弱性が、自由主義陣営の安全保障に横たわっています。

同記事では、日本がキヤノン・ニコンといった世界的な光学メーカーを擁しながら、これらの企業が世論の反発を懸念して防衛市場への直接参入をためらってきた実情も指摘されています。イスラエル製ドローン向けの高解像度レンズを供給するOphir Japanの代表者は、「最高品質のレンズを製造しているが、軍事用カメラ本体を製造しシステム全体として統合する企業が、現在の日本には存在しない」と語っています。今回の楽天とヘルシングの提携が視野に入れる「国内での量産化」は、こうした日本国内の製造・統合能力の空白を、海外の実戦実績を持つ企業との協業を通じて埋めようとする試みとして位置づけられます。

ドローンが現代の戦況を左右する主力兵器になりつつある実態は、当サイトの現代戦におけるドローンの軍事革命でも整理したとおりです。

同記事では、英国がウクライナへの12万機以上のドローンパッケージを自国企業へ優先発注し、政府購買力を通じて国内産業基盤を強化してきた事例も紹介しています。ヘルシングとの提携を通じた国内生産の検討は、日本にとっても同様に、防衛需要を梃子とした国内サプライチェーンの育成につながり得る選択肢です。

戦略への影響—AIによる非対称戦、そして日独連携

HX-2が体現するAIによる自律的な終末誘導・電子戦耐性は、当サイトがウクライナ軍AIと無人地上車両(UGV)活用した戦術で24,500件のミッションを遂行で報じた、AIを活用した非対称型の戦術がもたらす変化の延長線上にあります。

少数精鋭の高価な有人兵器システムに依存する従来型の戦力構成から、AIが自律的に判断・誘導する安価な無人機を大量投入する戦い方への移行は、防衛費の制約を抱える国にとって、限られた予算で抑止力を確保する現実的な選択肢になり得ます。

今回の提携が、10月末に予定されるドイツのメルツ首相の初来日、高市首相との安全保障協議を控えたタイミングで表面化した点も見逃せません。日独間の防衛協力が、装備品の調達・技術移転という具体的な形で動き出す兆しといえます。日本は現在、防衛費の対GDP比2%への引き上げを進めており、海外の先端防衛技術を国内に取り込む動きが加速する局面にあります。従来、国内の防衛調達は三菱重工業・川崎重工業といった国内大手が中心でしたが、海外の新興企業が実戦実績を武器に日本市場へ参入する動きは、今後の防衛産業の構図に一定の変化をもたらす可能性があります。

経済安全保障の観点から

今回の提携は、防衛装備の調達という枠を超え、経済安全保障の観点からも重要な意味を持ちます。特定の国・地域に依存したサプライチェーンは、平時には効率的であっても、有事や外交的緊張が高まった局面では、供給停止・遅延という形で安全保障上の脆弱性に転化します。ドローンという分野において、この依存の主たる相手が中国である以上、代替供給網の確保は経済的な選択である以上に、安全保障上の必要性として位置づけられます。

同時に、ヘルシングのような欧州企業との協業が、日本国内での実際の技術移転・量産体制の確立にまでつながるかどうかは、現時点でなお不透明です。楽天自身も、国内量産についてヘルシングと具体的な協議に入っていないと説明しており、今回の提携が「国産化」の実現までたどり着くかは、今後の実証試験の結果と、両社・両政府間の交渉の進展次第です。

今後注目すべき点

本記事執筆時点で、陸上自衛隊による導入の可否、国内生産の具体的な計画はいずれも決まっていません。今後は以下の点が焦点になると考えられます。

  • 9月末までの陸自による実証試験の結果と、導入判断の内容
  • ヘルシングと楽天・国内企業との、国内生産に向けた具体的な協議の進展
  • 10月末のメルツ首相来日時における、日独防衛協力の正式な合意内容
  • 同種の海外防衛スタートアップによる、日本市場への参入の広がり

 

出典

楽天が攻撃型ドローン、陸自配備と国産化を推進 独巨大新興と提携——日本経済新聞

楽天、迎撃用ドローンで提携 ドイツ新興と、防衛省納入狙う——共同通信(Yahoo!ニュース)

楽天、独ドローン新興と提携 攻撃型、防衛省納入に向け——時事通信

楽天がヘルシングの日本展開を支援|陸自がHX-2を9月末まで実証——innovatopia

Helsing to produce 6,000 additional strike drones for Ukraine——Helsing公式

軍事 ドローンのサプライチェーンに潜む中国依存の深刻な実態と日本の対応とデュアルユースの必要性——セキュリティ対策Lab

現代戦におけるドローンの軍事革命——セキュリティ対策Lab

ウクライナ軍AIと無人地上車両(UGV)活用した戦術で24,500件のミッションを遂行ー非対称型アルゴリズム戦争の全貌——セキュリティ対策Lab