中国 中央軍事委員会、7人中5人が失脚 張又侠・劉振立を党・軍籍から除名、残るのは習近平と張 昇民

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中国 中央軍事委員会、7人中5人が失脚 張又侠・劉振立を党・軍籍から除名、残るのは習近平と張 昇民

中国共産党は2026年9月21日、中央軍事委員会(CMC)副主席だった張又侠(Zhang Youxia)氏と、中央軍事委員・統合参謀部参謀長だった劉振立(Liu Zhenli)氏について、中国共産党籍と軍籍を剥奪し、事件を軍事検察機関へ移送したと発表しました。

台湾の中央通信社(CNA)と米Associated Press(AP)によると、両氏は2026年1月から「重大な規律・法令違反」の疑いで調査を受け、8月には国家中央軍事委員会の副主席・委員職を解かれていました。9月21日の処分で、党・軍からの排除が正式に進んだ形です。

これにより、2022年に発足した第20期中国共産党中央軍事委員会の当初7人のうち、李尚福、何衛東、苗華、張又侠、劉振立の5人が相次いで失脚し、現在活動が確認されているのは中央軍事委員会主席の習近平氏と、副主席の張 昇民(ちょう しょみん Zhang Shengmin)氏の2人となりました。

台湾政府系資料や米国防総省は、中央軍事委員会を中国軍の最高意思決定機関と位置付けています。習近平氏は国家主席だから軍を指揮するのではなく、中国共産党中央軍事委員会主席として人民解放軍など中国の武装力量を統率する最高位にあります。中国には「国防軍」という正式名称の軍はありませんが、制度上、習氏は人民解放軍を含む中国軍事組織の実質的な最高司令官に相当します。

中国軍最高部の人事処分のサマリー

確認できている内容:

  • 中国共産党は2026年9月21日、張又侠氏と劉振立氏を党籍・軍籍から除名しました。
  • 両氏の事件は軍事検察機関へ移送され、刑事手続きへ進みます。
  • 張氏は中央軍事委員会副主席として、習近平氏に次ぐ軍序列第2位でした。
  • 劉氏は中央軍事委員会委員で、統合作戦・作戦計画に関与する統合参謀部の参謀長を務めていました。
  • 両氏は2026年1月に「重大な規律・法令違反」の疑いで調査対象となりました。
  • 8月28日、中国全国人民代表大会常務委員会は張氏を国家中央軍事委員会副主席、劉氏を同委員から解任しました。
  • 2022年に発足した中央軍事委員会の7人中、5人が失脚しています。
  • 現在残るのは中央軍事委員会主席の習近平氏と、副主席の張 昇民氏です。
  • 台湾・米国メディアは一連の人事処分を「purge」「大清洗」などと表現しています。
  • 中国当局が公式に示している処分理由は、政治規律・組織規律への違反、汚職、巨額の金品受領などです。
  • 海外で報じられてきた核情報漏洩などの一部の主張は、中国当局の9月21日の公式処分理由としては確認されていません。
項目 内容
最新処分 2026年9月21日
張又侠 党籍・軍籍剥奪、軍事検察へ移送
劉振立 党籍・軍籍剥奪、軍事検察へ移送
張又侠の旧職 中央軍事委員会副主席
劉振立の旧職 中央軍事委員、統合参謀部参謀長
2022年発足時のCMC 7人
現在残るメンバー 習近平、張 昇民
習近平の軍事上の地位 中央軍事委員会主席
実質的な役割 中国武装力量の最高指揮権を握る立場
国防部長 軍令上の最高指揮官ではない

張又侠・劉振立を「党に不忠誠」と認定

台湾中央社が9月21日に報じた中国側の処分内容では、張又侠氏と劉振立氏について、政治問題と経済問題が重なっているとされています。

両氏には、

  • 中国共産党から「離心離徳」した
  • 政治規律・政治ルールに重大に違反した
  • 「団団伙伙」と呼ばれる派閥形成を行った
  • 党に対して不忠誠・不正直だった
  • 人事昇進などで職権を利用した
  • 巨額の金銭を受領した
  • 贈答品・金品を不正に受け取った
  • 親族や周辺スタッフへの監督責任を果たさなかった

などの問題があるとされています。

APも、中国当局が両氏を「党に不忠誠・不正直」と認定し、権限を利用して他者の昇進を支援する一方で巨額の金銭や贈答を受け取ったとしていると報じました。

これらは中国当局側の認定です。独立した司法手続きによって事実関係が確定した段階ではありません。

1月に調査、8月に軍委から解任、9月に党・軍籍を剥奪

張又侠・劉振立両氏の失脚は、数段階に分けて進みました。

2026年1月24日

中国国防部は、張又侠氏と劉振立氏に「重大な規律・法令違反」の疑いがあるとして、正式な審査・調査を開始したと発表しました。

この時点で、台湾中央社は2022年発足時の中央軍事委員会7人のうち、すでに5人が失脚し、習近平氏と氏のみが残る状態になったと報じています。

2026年8月28日

中国全国人民代表大会常務委員会は、

  • 張又侠氏を中華人民共和国中央軍事委員会副主席
  • 劉振立氏を中華人民共和国中央軍事委員会委員

から解任しました。

中国には、中国共産党の「党中央軍事委員会」と国家機関としての「中華人民共和国中央軍事委員会」がありますが、実際には同じ構成員が両方を兼ねる「一つの組織、二つの看板」とされます。

2026年9月21日

中国共産党中央政治局は両氏への処分案を承認し、党籍を剥奪しました。

軍籍についても、それ以前に中央軍事委員会が剥奪を決定していたとされています。

両氏の事件は軍事検察機関へ送られ、刑事訴追に向けた審査へ進みます。

2022年の中央軍事委員会7人中5人が失脚

2022年10月の中国共産党第20回党大会後、中央軍事委員会は次の7人で発足しました。

2022年当初 役職 2026年9月時点
習近平 主席 現職
張又侠 副主席 党籍・軍籍剥奪
何衛東 副主席 2025年に党籍・軍籍剥奪
李尚福 委員 失脚・党籍剥奪
劉振立 委員、統合参謀部参謀長 党籍・軍籍剥奪
苗華 委員、政治工作部主任 2025年に党籍・軍籍剥奪
張 昇民 委員、軍紀委書記 現職。2025年に副主席へ昇格

張 昇民氏は2025年10月、失脚した何衛東氏の後任として副主席へ昇格しました。

その後、張又侠・劉振立両氏も2026年1月に調査対象となり、当初7人の中央軍事委員会は実質的に習近平氏と張 昇民氏の2人体制になりました。

台湾の行政院大陸委員会も2026年3月の報告で、中央軍事委員会は「習近平と副主席兼軍紀委書記の張 昇民の2人のみ」と整理しています。

習近平は実質的に中国軍の最高司令官

中国の軍事指揮系統を理解する際に注意したいのは、「国家主席」「国防部長」「中央軍事委員会主席」の役割が米国や日本とは異なる点です。

台湾国防部の研究資料では、中央軍事委員会主席について「中共武装力量の最高統帥」と説明しています。

つまり、習近平氏が中国軍を指揮する法的・政治的な中心は、国家主席という肩書ではなく「中央軍事委員会主席」です。

中国には「国防軍」という名称の軍隊はなく、主要な武装組織として、

  • 中国人民解放軍
  • 中国人民武装警察部隊
  • 民兵

などがあります。

これらを統率する最高機関が中央軍事委員会です。

そのため、習氏は形式上「Commander-in-Chief」という英語の官職名を持っているわけではありませんが、軍委主席責任制の下では、中国人民解放軍を含む中国武装力量の実質的な最高司令官に相当します。

中国国防部長は米国防長官のような軍令上の最高指揮官ではない

中国の国防部長を、米国防長官や日本の防衛大臣と同じような指揮権を持つポストと見ると、中国の軍事制度を誤解することになります。





米国防総省が公開する中国軍組織図では、中央軍事委員会が、

  • 東部・南部・西部・北部・中部の各戦区
  • 陸軍
  • 海軍
  • 空軍
  • ロケット軍
  • 情報支援部隊
  • 航天部隊
  • サイバー空間部隊
  • 武装警察

などの上位に置かれています。

一方、国防部は国務院の下に置かれています。

中国国防部長は軍事外交や対外的な国防行政を担いますが、実際の作戦指揮系統の頂点は中央軍事委員会です。

現在の軍上層部が習近平氏と張 昇民氏の2人に縮小したことは、単に「国防相の上司が減った」という意味ではなく、中国の最高軍事意思決定機関そのものの構成が大幅に変わった事を意味し、実質的に習近平の意思で軍事的 作戦行動を発令できるようになります。

張又侠は習近平に次ぐ軍序列第2位だった

張又侠氏は中央軍事委員会第一副主席で、米APは「軍事序列では習近平氏に次ぐ人物」と説明しています。

張氏は中国軍上層部では珍しく実戦経験を持つ将軍でもあり、中越国境での戦闘経験がありました。

2022年の第20回党大会後も中央軍事委員会副主席を続投し、習近平体制下で最も長く軍中枢にいた最高幹部の一人でした。

そのため、張氏への調査開始は、それ以前に進んでいた国防相、ロケット軍、装備部門、政治工作部門などへの処分とは異なり、中央軍事委員会の最上層まで処分が及んだ事例となりました。

劉振立は統合作戦の中枢・統合参謀部を統括

劉振立氏は中央軍事委員会委員と、中央軍事委員会統合参謀部参謀長を兼任していました。

統合参謀部は、

  • 作戦計画
  • 指揮支援
  • 軍事訓練
  • 戦備
  • 統合作戦関連業務

などを担う中央軍事委員会直属部門です。

劉氏は人民解放軍陸軍司令員を経て、2023年に統合参謀部参謀長へ就任しました。

張又侠氏だけでなく、実際の作戦計画を支える参謀部門トップまで同時に処分された点は、中国軍の指揮系統を分析する台湾や米国の安全保障関係者からも関心を集めています。





処分理由は「汚職」だけでなく政治的忠誠も明記

中国側が9月21日に公表した処分理由では、金銭問題だけでなく政治的な忠誠も強く問題視されています。

台湾中央社によると、中国側は両氏について、

「党に不忠誠、不正直」
「政治規律・政治ルールへの重大な違反」
「派閥形成」

などを明記しました。

1月に両氏への調査が公表された直後、中国人民解放軍機関紙は両氏が「軍委主席責任制を重大に踏みにじり、破壊した」と批判しました。

軍委主席責任制とは、中央軍事委員会主席である習近平氏に軍事指揮・軍政上の最終責任を集中させる制度です。

台湾国防部の研究資料では、習近平氏の軍改革について「軍権を中央軍事委員会主席へ集中させた」と分析しています。

したがって今回の処分では、中国当局自身が汚職問題とともに、軍委主席への政治的忠誠と指揮統制を処分理由に含めています。

「核情報を米国へ漏洩」などの報道は今回の公式処分理由とは別

張又侠氏を巡っては、2026年1月以降、米国メディアで中国の核兵器関連情報を米国へ流した疑いなどが報じられました。

しかし9月21日に中国側が公表した処分理由では、核情報漏洩は明示されていません。

台湾中央社も、情報漏洩説については米メディアが関係者の話として報じた内容として扱っています。

そのため、本記事では、

  • 中国当局が正式に認定した規律・汚職・政治問題
  • 米メディアが報じた未確認の情報漏洩疑惑

を分けて扱います。

現時点で「張又侠氏が米国へ核機密を渡した」と事実として断定できる公的資料は確認できません。





台湾政府「全軍の政治審査が戦力へ影響する可能性」

台湾の行政院大陸委員会は2026年3月の報告で、中央軍事委員会が習近平氏と張 昇民氏の2人まで減ったことについて、今後の人民解放軍全体に対する政治審査が「整体戦力」に影響する可能性があるとの見方を示しました。

一方、台湾政府は張又侠氏の調査発表後、台湾海峡の安全保障への影響について慎重に判断する姿勢も示しています。

台湾の研究者・米国の専門家の間でも評価は分かれています。

一部の台湾研究者は、指揮系統の混乱や実戦経験を持つ幹部の喪失によって、大規模作戦を短期的に実施するハードルが高まる可能性を指摘しています。

別の研究者は、権力集中が進むことで習近平氏への異論や慎重論が届きにくくなり、台湾を巡る意思決定で戦略的な誤算のリスクが高まる可能性を指摘しています。

これらは将来の軍事行動を予測するものではなく、人事変動が軍事意思決定へ与え得る影響についての分析です。

米国防総省は以前から中国軍の腐敗を軍近代化の課題として分析

米国防総省は、中国軍上層部の大規模処分が始まる以前から、汚職を人民解放軍の近代化に影響する構造的問題として分析しています。

2024年版China Military Power Reportでは、2023年後半だけで少なくとも15人の軍高官・防衛産業幹部が汚職問題で職を失ったとしています。

2025年版では、中央軍事委員会を中国軍の最高意思決定機関として示すとともに、習近平氏が中央軍事委員会主席を務める指揮構造を掲載しています。

その後の2025年から2026年にかけて、中央軍事委員会そのものへ処分対象が広がりました。

APは今回の張又侠・劉振立両氏の除名を、習近平政権が長期間続けてきた軍内反腐敗・忠誠確保の一環と報じています。

台湾・日本が確認したいのは「軍が弱くなったか」だけではない

中央軍事委員会の大規模な人事変動について、「人民解放軍の能力が低下した」「台湾有事が近づいた」といった単純な結論を出すことはできません。

確認すべきなのは、少なくとも次の点です。

  • 中央軍事委員会の空席へ誰が補充されるか
  • 統合参謀部参謀長の後任
  • 軍種・戦区司令官の追加人事
  • 東部戦区の台湾正面での指揮体系
  • 軍委主席責任制がさらに強化されるか
  • 作戦上の専門的意見を習近平氏へ伝える経路がどう変化するか
  • 粛清・政治審査が訓練、装備調達、昇進、人事にどこまで影響するか
  • 台湾周辺の演習・警戒活動に変化があるか

中国軍の最高意思決定機関が7人から2人へ縮小したことは確認できますが、それだけから今後の台湾への軍事行動や時期を予測することはできません。

一方で、習近平氏が中央軍事委員会主席として中国軍の実質的な最高司令官に相当すること、その直下の中央軍事委員会で意思決定権が従来以上に少人数へ集中していることは、台湾海峡の安全保障を分析するうえで継続的な確認事項になります。

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出典

台湾

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