造船会社「大永造船」で15年にわたる横領、元社員2人に約9,600万円の損害賠償請求

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造船会社「大永造船」で15年にわたる横領、元社員2人に約9,600万円の損害賠償請求

高知さんさんテレビの報道によると高知市に本社を置く造船会社「大永造船」が、元社員2人による長年にわたる業務上横領の疑いについて提訴したことが明らかになりました。高知県警も同容疑で捜査を進めており、内部統制の脆弱さが大きな課題として浮き彫りになっています。

発覚の経緯と会社の対応

事案が表面化したのは2022年7月。経理担当者が体調不良により長期休職し、代行者が不審な処理に気付いたことが発端です

訴状によりますと着服したのは高知市万々に住む経理を担当していた53歳の男性と、高知市種崎に住む執行役員で現場責任者だった73歳の男性です。

その後、2022年11月に被害届を提出し、2人は2023年5月に懲戒解雇されました。

榊原社長は、「執行役員の権限集中と経理業務の属人化」が発覚の遅れを招いたと述べ、今後は税理士を含めた4名体制での経理管理を行い、コンプライアンスの強化を図るとしています。

なお、元経理担当の代理人は「横領の一部は認めるが横領した金額については争う」、元執行役員の代理人は「横領はしていない。裁判で全面的に争っている」と主張しています。

着服の手口

大永造船の説明によれば、不正には以下のような典型的な経理操作の悪用手口が用いられていました:

  1. 架空業者名義での請求書作成と現金小切手の発行

  2. 架空の貸付金の経理処理による資金流用

  3. 執行役員の自宅改修費を業務経費として偽装計上

不正により会社が被った損害はおよそ8,700万円にのぼり、弁護士費用等を含めた損害賠償請求額は約9,600万円となっています。

なぜ内部不正は防げなかったのか?

この事件は、権限の集中と業務の属人化という、典型的な内部不正リスクの構造を表しています。特に中小企業では、長年の信頼関係に依存してチェック体制が形骸化しているケースが散見されます。

複数人による相互牽制、ログの定期的な監査、業務フローの可視化など、基本的な内部統制が改めて問われる事案です。

参照

【独自】造船会社が元社員2人に9600万円の損害賠償請求 高知県警が業務上横領の疑いで捜査