南伊勢町元職員、勤務先の病院口座から1億7千万円着服 津地裁で懲役7年の実刑判決

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南伊勢町元職員、勤務先の病院口座から1億7千万円着服 津地裁で懲役7年の実刑判決

三重県南伊勢町の町立病院や水道事業の口座から、総額約1億7千万円を着服した元町職員、広出翔被告(41)に対し、津地方裁判所は5月8日、懲役7年(求刑懲役8年)の判決を言い渡しました。

判決内容と犯行の概要

出口博章裁判官は判決理由で、広出被告が遊興費や生活費のために約6年間にわたり常習的に着服を繰り返していたことを指摘しました。さらに、発覚を免れるために会計データを改ざんするという行為も行っており、「立場を悪用した身勝手な犯行だ」と強く非難しました。

判決によれば、広出被告は2016年から2022年にかけて、町の会計担当者として管理していた町立南伊勢病院および町水道事業の口座から、計697回にわたって現金を引き出し、着服したとされます。なお、着服した約1億7千万円のうち、1153万円は被害弁償されたとされています。

犯行の背景「アイドルのコンサートなどに使った」

別の調査報道によると、広出被告は南伊勢町立南伊勢病院で会計を担当していた30代の頃、2019年以降、患者の診療費などを着服していました。発覚は2024年6月、病院側が昨年度の決算書類を確認した際に、不審な資金引き出しが繰り返されていたことに気づいたことによるものです。

町の調査に対し、広出被告は着服の事実を認めたうえで、「アイドルのコンサートなどに使った」と説明していることが明らかになっています。
着服された資金は当時、全額未返還であり、町は刑事告訴の方針を固め、2024年6月21日に記者会見も行っていました。

事件がもたらした影響

この事件は、公的資金の管理体制に対する深刻な疑念を呼び起こしました。
町立病院や公共水道事業といった、地域住民の生活インフラに関わる資金が個人によって長期間にわたり不正流用されていた事実は、住民からの信頼を大きく損ねる結果となっています。

今後、南伊勢町では、再発防止策として会計管理体制の強化や監査の厳格化が求められるでしょう。

業務上横領防止に向けた一般的な再発防止策

今回のような公共機関における資金着服事案を防ぐためには、以下のような対策が重要となります。

資金管理体制の強化

  • 出納業務における複数人確認の徹底
     現金や口座資金の管理については、1人の担当者に任せるのではなく、必ず複数人による確認・承認を義務付ける体制を整備します。

  • 定期的な帳簿・口座照合の実施
     日常的な資金の動きについては、第三者による定期的な監査や帳簿・通帳との突合確認を行い、不正を早期に発見できる仕組みを導入します。

会計システムの透明性向上

  • 会計システムへのログ記録機能の活用
     資金移動や記帳の操作履歴をすべて記録し、改ざんや不正操作があった場合でも履歴から追跡できる環境を整備します。

  • 電子決裁・デジタル署名の導入
     出金や送金の際には、管理職など別の担当者による電子承認を必須とし、記録を電子的に保管することで不正の抑止を図ります。

職員の意識向上と行動管理

  • コンプライアンス教育の継続的実施
     公金管理に携わる職員に対し、定期的に倫理規範や不正防止に関する研修を実施し、リスク意識を高めます。

  • 内部通報制度(ホットライン)の設置と周知
     不正行為を早期に発見できるよう、職員が匿名で不正を通報できる窓口を設け、利用しやすい環境を整備します。

業務分担と異動の活用

  • 長期間同一職務を担当させない運用
     出納・資金管理業務については、定期的な人事異動を行い、特定の担当者による業務の固定化を防止します。

  • 業務ローテーションの導入
     財務関係業務に限らず、幅広い業務を経験させることで、特定業務に関する依存度を下げ、不正の温床を作らないようにします。

不正発覚時の迅速な対応

  • 緊急対応マニュアルの整備
     不正が疑われた際には迅速に対応できるよう、具体的な対応手順や連絡体制をマニュアル化し、職員に徹底します。

  • 損害回復措置と法的対応の明確化
     被害が発生した場合には、速やかに返還請求や刑事告訴を行う方針をあらかじめ定めておき、厳格に運用します。

一部参照

https://www.tokyo-np.co.jp/article/403557