国立病院機構名古屋医療センターは、患者の個人情報を含む私物のUSBメモリを職員が紛失する事案が発生したと公表しました。派遣先の医療機関から帰宅する際に紛失したもので、その後利用した公共交通機関の座席下から発見され、5日後に回収されています。対象となる患者は591名で、気管支鏡検査データやがんステージ区分といった機微な医療情報も含まれていました。
サマリー
- 名古屋医療センターの職員が、患者の個人情報が保存された私物のUSBメモリを、令和8年(2026年)5月22日(金)に派遣先医療機関で勤務した際に持参していたが、同日、派遣先医療機関から帰宅する際に紛失していることが判明した
- 派遣先医療機関内および帰路の捜索、利用した公共交通機関への問い合わせを行った結果、公共交通機関の事業所で保管されていた当該USBメモリを5月27日(水)に回収した
- 当該USBメモリは、5月22日の帰路で職員が利用した公共交通機関の座席の下から、5月23日(土)に公共交通機関職員により回収され、事業所で保管されていたもの
- 現時点において個人情報の漏えいや不正利用の事実は確認されておらず、個人情報が外部に流出した可能性は低いと同センターは説明している
- USBメモリには591名の患者に関する情報が保存されていた。内訳は、患者ID・氏名・年齢・手術名(591名全員)、気管支鏡検査データ・検査日(591名のうち375名)、がんステージ区分(591名のうち370名)、病変サイズ(591名のうち419名)
- 対象となる患者へは、順次郵送によりお詫びと報告を行うとしている
- 再発防止策として、私物USBメモリ等の使用禁止の徹底、USBメモリ等の外部電磁的記録媒体の持ち出し原則禁止の徹底、職員への情報セキュリティ教育の徹底、情報セキュリティ監査の強化を挙げている
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 紛失発生日 | 2026年5月22日(金) |
| 発覚状況 | 派遣先医療機関からの帰宅時に紛失に気づく |
| 回収日 | 2026年5月27日(水) |
| 回収経緯 | 5月22日利用の公共交通機関の座席下から5月23日に交通機関職員が発見、事業所で保管 |
| 対象患者数 | 591名 |
| 保存されていた情報 | 患者ID・氏名・年齢・手術名(全員)、気管支鏡検査データ・検査日(375名)、がんステージ区分(370名)、病変サイズ(419名) |
| 情報漏えい・不正利用の有無 | 確認されていない |
| 対象患者への対応 | 順次郵送でお詫び・報告 |
| 問い合わせ窓口 | 個人情報対応専用窓口(0120-959-526、全日9時〜17時) |
何が起きたか
名古屋医療センターの公表によれば、同センターの職員が、患者の個人情報が保存された私物のUSBメモリを、2026年5月22日(金)に派遣先医療機関で勤務した際に持参していました。同日、派遣先医療機関から帰宅する際に、当該USBメモリを紛失していることが判明しました。
同センターは、派遣先医療機関内および派遣先医療機関からの帰路の捜索を行うとともに、職員が利用した公共交通機関にも問い合わせを行いました。その結果、公共交通機関の事業所で保管されていた当該USBメモリを、5月27日(水)に回収しています。詳しい経緯としては、当該USBメモリは5月22日の帰路で職員が利用した公共交通機関の座席の下から、翌23日(土)に公共交通機関職員によって発見・回収され、事業所内で保管されていたことが判明しました。
同センターは、現時点において個人情報の漏えいや不正利用の事実は確認されておらず、個人情報が外部に流出した可能性は低いと考えているとしています。
対象となった患者情報
当該USBメモリには、591名の患者に関する情報が保存されていました。全591名について患者ID・氏名・年齢・手術名が、591名のうち375名について気管支鏡検査データ・検査日が、591名のうち370名についてがんステージ区分が、591名のうち419名について病変サイズが、それぞれ保存されていたとしています。がんステージ区分・病変サイズ・気管支鏡検査データといった情報は、患者にとって極めて機微性の高い医療情報であり、対象となる患者へは順次郵送によりお詫びと報告が行われるとしています。
再発防止策
同センターは、本件発覚後速やかに情報管理体制の緊急点検・強化を実施したとしています。再発防止策としては、私物USBメモリ等の使用禁止の徹底、USBメモリ等の外部電磁的記録媒体の持ち出し原則禁止の徹底、職員への情報セキュリティ教育の徹底、情報セキュリティ監査の強化を挙げています。
医療機関で相次ぐUSBメモリ紛失
当サイトで継続して報じてきた通り、患者の個人情報を含むUSBメモリの紛失事案は、医療機関において繰り返し発生しています。関西医科大学附属病院では脳神経内科の医師が使用していたUSBメモリを一時紛失し、患者約1,800人が対象となった事案や、秋田大学医学部附属病院で院内での紛失とみられるUSBメモリ紛失により患者・職員1,400名以上の個人情報が対象となった事案、業務委託先事業者の従業員が患者379人分の情報が入ったUSBメモリを紛失した多根総合病院の事案など、いずれも紛失後に発見・回収され、外部への流出は確認されていないケースが大半です。今回の名古屋医療センターの事案も、この系統に位置づけられるもので、幸いにも公共交通機関での落とし物として発見・回収されるという結果に至っています。
今回の事案が他の事例と異なる特徴は、紛失が自院内ではなく、職員が派遣されていた別の医療機関との往復の過程で発生した点です。派遣勤務という業務形態そのものが、私物端末・記録媒体を外部へ持ち出す機会を増やし、紛失リスクを高める一因になっている可能性があります。
情報システム部門への示唆
今回の事案は、私物のUSBメモリに患者情報を保存し、派遣先医療機関との往復に持ち歩いていたという、いわゆる「シャドーIT」的な運用が根本原因になっています。組織が正式に許可・管理していない記憶媒体に機微な情報を保存し、日常的な移動の中で持ち運ぶという行為は、盗難・紛失・不正アクセスのリスクを著しく高めます。
医療機関に限らず、職員が複数の勤務先を掛け持ちする派遣・出向形態の業務がある組織では、私物記録媒体の使用を一律に禁止するだけでなく、業務上どうしても情報を持ち出す必要がある場合の正規の代替手段(暗号化された貸与端末、パスワード保護付きの業務用USBメモリ、VPN経由でのリモートアクセス等)を用意しておくことが重要です。ルールを「禁止」するだけでは、業務上の必要に迫られた職員が私物での代替に走ってしまうリスクが残るため、正規の手段を利用しやすい環境を同時に整備することが、実効性のある再発防止につながります。あわせて、外部電磁的記録媒体の持ち出しを許可制にし、持ち出しの記録・返却確認を徹底することで、今回のような紛失の早期発見・対応にもつなげやすくなります。








