マーケティング業務に必須のPPM分析の目的・手法・分析例

BtoB マーケティングのPPM分析の例

本日は「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)分析」について紹介したいと思います。問題・課題を発見する手法として「3C分析」や「4P分析」などをご紹介してきましたが、ここでご紹介する「PPM分析」は戦略を策定する際に有効なフレームワークですので、この機会にぜひ覚えて頂いて、活用いただけると幸いです。

PPM分析の目的

PPM分析を行う目的は、自社の経営資源を再認識し、どのような戦略の方向性があるのかを把握し、どの方向に展開していくのかを検討するために行います。

PPM分析の手法

ここでは、PPM分析の具体的な手法について紹介していきます。PPM分析とは、「市場成長率」と「相対的マーケットシェア率(市場占有率)」を軸としたマトリクスを使って、自社の保有する事業の分析と戦略設計を行います。経営資源の投資配分を判断するための手法であり、戦略として自社および競合他社の事業の立ち位置を確認することに役立ちます。

4つの象限に分類しますが、それぞれ「花形事業」「問題児」「金のなる木」「負け犬」と呼ばれます。

「花形事業(Star)」

マトリクス上の右上に位置し、市場成長率および市場占有率がともに高い事業です。市場占有率が高いものの、市場成長率も高いためにレッドオーシャンの市場となっており、積極的な投資を継続することが望まれる事業となります。

「問題児(Problem Child)」

マトリクス上の左上に位置し、市場成長率が高いためにレッドオーシャンの市場であり、積極的な投資が必要である一方、市場占有率が低いために、利益が出しにくい状態の事業です。

悪く言えば金食い虫の状態ですが、市場占有率を高めることができれば、将来的に「花形事業」や「金のなる木」になる可能性がある事業ともいえます。

「金のなる木(Cash Cow)」

マトリクス上の右下に位置し、市場成長率が低く、新規参入が抑えられているために競争が穏やかになっているために積極的な投資は必要ありません。

その一方で、市場占有率が高いため、安定した利益を生み出してくれる、まさしくキャッシュを生み出してくれる事業と言えます。

「負け犬(Dog)」

マトリクス上の左下に位置し、市場成長率が低いために積極的な投資は必要ない一方で、市場占有率が低いために利益も生まない事業の事を指します。

事業の成長が見込めないため、事業整理の対象となります。事業整理により余剰となった資金を「花形事業」や「問題児」の事業に振り分けることが経営判断として望まれます。

PPM分析の使い方

1.市場成長率を算出する

市場成長率は、本年度の市場規模を前年度の市場規模で割ることによって算出できます。

市場成長率=本年度の市場規模/前年度の市場規模

市場規模のデータについては、公的機関やシンクタンクが発表している統計データを用いて算出します。

2.市場占有率を算出する

市場占有率は、売上高を市場規模で割ることにより算出できます。

市場占有率=売上高/市場規模

3.自社の保有する事業を書き出す

マトリクス上に自社の保有する事業を書き出します。このとき、事業の売上規模を円の大きさで表現すると、よりイメージが湧きやすくなります。

4.今後の方針を考える

それぞれの事業に関して、今後どのような戦略をとっていくかという方針を考えます。ポイントとしては、「金のなる木」の象限にある事業から生まれる収益を「問題児」の事業に注ぎ、シェア率を上げて「花形事業」に育てることです。

補足

PPM分析を行う際は「問題児⇒花形事業⇒金のなる木」の流れを意識することが重要です。「問題児」を「花形事業」に移行できれば、収益性が高まり、企業の利益につながります。そして「花形事業」は市場の成長が止まるのに伴い「金のなる木」へと移行していくという流れになります。

多少リスクを取ってでも「問題児」の事業に経営資源を注ぐために、その体制作りをどのように行っていくかを考えることが重要です。

PPM分析の分析例

「楽天グループ」の事例

ここでは「楽天グループ」を一例に採り上げたいと思います。

「楽天グループ」はご存じの通り、インターネット関連サービスを中心に展開する企業で、インターネットショッピングモール「楽天市場」、総合旅行サイト「楽天トラベル」、フリマアプリ「ラクマ」などのECサイトの運営、その他、通信、金融、不動産、スポーツなど、様々な事業を展開しております。

「楽天グループ」の事業を例にPPM分析例

通信事業や携帯電話事業は5Gサービスを代表として成長率が高い一方で、競合が多くシェア率もまだ低いため「問題児」に該当します。

「楽天グループ」としては当該市場を獲得する意図が明確であり、積極的に資金を投下し、基地局の設置を進めています。

また、EC事業は高いシェア率を誇っており、楽天経済圏の中で資金が循環していることを鑑みると「花形事業」あるいは「金のなる木」ある事業だと言えます。

EC事業でキャッシュを生み出し、「問題児」である通信事業に資金を配分し、通信事業をやがて「花形事業」「金のなる木」に成長させていく戦略と考えることができます。

「メルカリ」の事例

続いて「メルカリ」の事例を採り上げたいと思います。

「メルカリ」の事業を例にPPM分析例

皆さんもご存じフリマアプリを展開する「メルカリ」社の2023年6月期第3四半期の決算説明資料を見てみましょう。

https://pdf.irpocket.com/C4385/bU43/HHZF/OfU5.pdf

事業を分解してみると、「マーケットプレイス事業」「Fintech事業」「US事業」に分解されるようです。「マーケットプレイス事業」はフリマアプリのプラットフォーム事業、「Fintech事業」はクレジットカードサービス「メルカード」やメルカリプラットフォーム内でのビットコイン売買事業、「US事業」は米国における中古品売買プラットフォーム事業を指します。

決算説明資料を見る限り、「マーケットプレイス事業」はGMV成長率が一時的に鈍化しているものの利益率は目標値を大幅に超過、新規ユーザー獲得も順調に獲得できているようで、PPM分析においては「花形事業」あるいは「金のなる木」に該当するでしょう。

また、「Fintech事業」については、これから「メルカード」への投資を拡大する、との記載や、「メルカリ」内でビットコインの売買ができるサービスを開始、との記載から、おそらくこれから当社が成長するために資金を投下し事業を拡大していくステージにあるため、「問題児」に該当します。

一方、「US事業」はなかなか苦戦を強いられているようで、厳しい事業環境、との記載や、GMV成長率がマイナス成長、より筋肉質な経営にむけて費用の削減を行った、との記載から「負け犬」事業に近いのかもしれません。

図示すると下記の様に表すことができます。

今後、「Fintech事業」がどのように成長していくのか、また、「US事業」は梃(てこ)入れを図るのか、それとも事業自体を撤退もしくは縮小するのか、注目していくと、よりメルカリ社に対して理解が深まっていくかと思います。

まとめ

ここまでお読み進めて頂きありがとうございました。

今回はPPM分析について紹介してきました。本記事が読者の皆さまのお役に立てると幸いです。

引き続き宜しくお願い致します。

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