英国のアンディ・バーナム首相は2026年10月12日、イングランド南西部のRAF Fairford(フェアフォード空軍基地)付近で9月27日に不審車両が見つかり、男らがテロ行為の準備容疑などで逮捕された事件について、イラン国内で計画が調整され、イラン革命防衛隊(IRGC)が指示した可能性が極めて高いとの英国政府の評価を下院で明らかにしました。
英国政府が示したのは、情報機関などの分析に基づく国家関与の評価です。警察による刑事捜査は継続しており、逮捕された7人は全員保釈されています。イラン側は関与を否定しています。
英国外務省は同日、イラン大使を召喚したほか、イラン政府のために海外で敵対的活動に関与したとする2人への制裁を発表しました。英国、米国、欧州諸国などの外相による共同声明も公表され、国外での代理勢力や犯罪ネットワークを使った活動に警戒を示しました。
RAF Fairford事件と英国政府の発表のサマリー
- 2026年9月27日未明、英国グロスターシャー州のRAF Fairford付近で3台の不審車両が見つかり、男5人が逮捕されました。
- 英対テロ警察は当初、爆発物関連法違反や2006年テロ法第5条の「テロ行為の準備」の疑いで捜査を開始しました。
- 車両からガソリンが見つかりましたが、簡易爆発装置は確認されませんでした。
- 10月1日と6日にそれぞれ1人を追加逮捕し、計7人となりました。10月8日時点で全員が警察の保釈条件下にあります。
- 10月12日、バーナム首相は事件について、イラン国内で調整され、IRGCが指示したとの英国政府の高い確信度の評価を公表しました。
- マフムード内相は、イランにいる特定の人物が調整に関与した可能性が高いとの見方を説明しました。
- 英政府はイラン大使を召喚し、IRGCの防諜部門幹部らイラン国籍の2人に資産凍結などの制裁を科しました。
- 複数国の共同声明は、イランの国家支援を受けたとされる放火、破壊工作、サイバー攻撃などを非難しました。ただし、Fairford事件自体がサイバー攻撃だったとの発表ではありません。
| 項目 | 公表・確認された内容 |
|---|---|
| 対象 | RAF Fairford付近(英グロスターシャー州)で発生した不審車両・テロ準備容疑の捜査 |
| 最初の逮捕 | 2026年9月27日、5人 |
| 追加逮捕 | 10月1日、10月6日に各1人。計7人 |
| 捜査状況 | 10月8日時点で7人とも警察による保釈中。刑事捜査は継続 |
| 現場での押収物 | 車両からガソリンを確認。簡易爆発装置は見つかっていない |
| 英政府の帰属評価 | イラン国内での調整が「highly likely」、IRGCによる指示が「almost certainly」 |
| 帰属評価の公表 | 2026年10月12日、首相・内相が議会で説明 |
| 外交・制裁措置 | 駐英イラン大使の召喚、イラン国籍の2人に新たな制裁 |
英首相「イラン国内で調整、IRGCがほぼ確実に指示」と議会で明言
バーナム首相は10月12日の下院声明で、RAF Fairfordでの事件に関し、イラン国内で調整された可能性が高く、イラン革命防衛隊による指示がほぼ確実だとする英国政府の評価を示しました。
英国政府の原文は、イラン国内での調整に「highly likely(可能性が高い)」、IRGCの指示に「almost certainly(ほぼ確実)」という異なる表現を用いています。両者を区別し、英国政府による評価として伝える必要があります。
シャバナ・マフムード内相も同日の下院声明で、イランに拠点を置く既知の人物が事件を調整した可能性が高いと説明しました。ただし、英国政府は発言の中で、事件の具体的な指揮命令系統、逮捕者とIRGCの間の連絡記録、情報評価に用いた証拠を公表していません。
これまで英国の捜査当局は、外国政府の関与を含めて調べていると説明していました。10月12日の首相発言は、捜査初期の段階から一歩進み、英国政府としてイラン革命防衛隊の関与を明示したものです。一方、英国の刑事捜査で容疑者の犯行が認定されたことを意味するわけではありません。
不審車両3台からガソリン発見、爆発装置は確認されず
事件の発端は9月27日午前0時45分ごろの通報です。RAF Fairfordに向かっているように見える3台の不審車両について警察に情報が寄せられ、武装警察官が出動。近隣のWhelford地区で男5人を逮捕しました。
警察は、爆発物関連法に基づく容疑に加え、テロ行為の準備を禁じる2006年テロ法第5条の容疑も捜査しています。英国のCounter Terrorism Policingは9月29日、車両の捜索でガソリンを発見したものの、簡易爆発装置(IED)は確認されなかったと明らかにしました。
その後、ロンドンのウェストミンスター地区で10月1日に英国とイランの二重国籍を持つ25歳の男、10月6日に英国籍の22歳の男を追加逮捕しました。10月8日付の警察の捜査更新によると、計7人全員が警察の保釈条件下にあります。
現場からガソリンが見つかった事実は、爆発物が完成していたことや基地への攻撃が実行されたことを示すものではありません。10月12日時点で容疑者の起訴も報じられておらず、英国政府の国家関与評価と刑事手続きの進展は別に捉える必要があります。
セキュリティ対策Labでは、9月27日の不審車両発見と当初5人の逮捕について、対テロ警察の発表を基に経緯を報じています。今回の10月12日の公表は、その後の国家関与評価に関する重要続報です。
RAF Fairfordは米軍爆撃機が使用、英政府は3月に基地利用を許可
RAF Fairfordは、英国国内にある米空軍の爆撃機運用拠点です。英国のジョン・ヒーリー国防相は2026年3月9日の議会声明で、米国からの要請に応じ、RAF Fairfordとディエゴガルシアの基地利用を特定の防衛的作戦のために認めたと説明しました。
同声明によると、作戦はイランのミサイルを発射元で破壊することを目的とするもので、米軍爆撃機がFairfordに到着したことも明らかにしています。このため同基地は、2026年のイランをめぐる米英の軍事対応に関係する施設です。
英ガーディアンは10月12日、事件後に米軍が同基地に展開していたB-1爆撃機12機を撤収したと報じました。ただし、この動きについて英国政府の公式資料だけで具体的な撤収理由が立証されたわけではなく、ドローン攻撃計画などの報道上の見方を捜査で確定した手口として扱うことはできません。
英国、IRGC幹部と犯罪ネットワーク関係者2人を制裁
英国のエド・ミリバンド外相は10月12日、駐英イラン大使を召喚し、英国国内での威嚇や敵対的活動を容認しない方針を伝えたと公表しました。併せて、イラン政府のために海外で敵対的活動を行った、または支援したとして、次の2人を制裁対象に追加しました。
| 制裁対象 | 英外務省が示した位置付け |
|---|---|
| Ruhollah Bazghandi | IRGCの防諜作戦責任者 |
| Shahram Ali Reza Tamarzadeh Jakki | イラン反体制派を狙う複数の企図に関わったとされるZindashti犯罪ネットワークの支援者 |
制裁内容は資産凍結、渡航禁止、会社役員への就任制限です。英外務省は、この2人が欧州や米国での敵対的活動に関与したと説明していますが、今回のFairford事件で逮捕された7人と同一人物であるとも、7人に直接指示した人物であるとも公表していません。
英国政府はすでにIRGCを国家脅威対策の新たな権限に基づき指定しており、外国政府のために活動する代理組織や犯罪ネットワークの摘発・制裁を強化しています。
英米などが共同声明、代理組織による放火・破壊工作・サイバー攻撃を非難
10月12日には英国、米国、欧州などの外相による共同声明も発表されました。声明はRAF Fairford事件に関する英国の帰属評価を支持し、イラン革命防衛隊が秘密ネットワークや代理勢力を使って国外で敵対的活動を続けているとする英国の見方に言及しました。
共同声明は、死傷者を狙う企図、放火、破壊工作、サイバー攻撃、その他のハイブリッド活動を強く非難しています。また、ユダヤ人コミュニティーやイラン人ジャーナリスト、米国の権益を標的とした欧州での攻撃との関連にも触れています。
これはイランによるとされる一連の国外活動に対する外交的な評価で、今回のRAF Fairford事件がサイバー攻撃によって実行されたという意味ではありません。軍事施設への物理的脅威と、サイバー空間における国家支援型の活動はそれぞれ異なる事象として検証する必要があります。
なお、イランの駐英大使は関与を否定し、英国側に根拠の提示を求めたと英Sky Newsなどが報じています。英国政府の帰属評価に対し、イラン側の立場は対立しています。
国家支援型の脅威と施設警備、情報システム部門が確認する事項
今回の警察対応では、市民の通報をきっかけに武装警察官や爆発物処理の専門家が動き、周辺地域の警戒・避難が行われました。基地周辺の異常を察知する住民からの通報と、複数機関による初動対応が機能した事例です。
軍事施設、データセンター、通信拠点、エネルギー施設などの重要施設を運営する組織では、設備周辺の不審活動を扱う警備部門と、SOC・CSIRTなどのサイバー対応部門が、どの事案を相互に共有するか整理しておく必要があります。特に、施設への物理的な立ち入り制限や避難指示が業務継続に与える影響、外部委託の警備会社からの報告、災害・不審物・サイバー障害が重なった場合の意思決定経路を確認します。
英国政府の今回の発表は、国家が代理勢力や犯罪ネットワークを利用する危険性に言及しています。ただし、国内企業の個別のサイバー攻撃が今回の事件やIRGCに結び付く証拠が示されたわけではありません。国家帰属の報道を自社の脅威評価に利用する場合には、公的な評価、捜査上の認定、攻撃者自身の主張の区別が必要です。
出典
- PM statement to the House of Commons: 12 October 2026 – Prime Minister’s Office, 10 Downing Street
- Home Secretary Oral Statement on National Security – Home Office(2026年10月12日)
- Foreign Secretary statement on Iran, 12 October – Foreign, Commonwealth & Development Office
- Joint Statement on Iran, 12 October – Foreign, Commonwealth & Development Office
- Man bailed in RAF Fairford investigation(2026年10月8日更新)– Counter Terrorism Policing
- Update on RAF Fairford investigation – 18:00 29 September 2026 – Counter Terrorism Policing
- Middle East Update Oral Statement(2026年3月9日)– Ministry of Defence
- Iran’s Revolutionary Guards ‘almost certainly’ behind RAF Fairford threats, says Burnham – The Guardian(2026年10月12日)
- Politics latest: Burnham says RAF Fairford incident almost certainly directed by Iran – Sky News(2026年10月12日)








